Lナンパの場になっている

男子校の文化祭に出かけたら、来場者の大半が女子生徒。男子は来場した女子に声をかけてばかりの「ナンパの場」になっていた。こんなことを学校側が放置しているのは全く理解できないのですが。

   判断する前に現実を知るべき
 東京周辺と大阪周辺の男子校文化祭は、ナンパの場になっている高校が目立ちます。95%の生徒が地道に発表をしていても、残りの5%がナンパしてれば非常に目立ちます。確かに、多くの保護者にとっては、見るに耐えない光景だと思います。校内をぶらぶらして、かわいい子がいると、「ねえ、どこから来たの」とか声をかけて、1分後には「彼氏いないの」とか「文化祭終わったあとカラオケでも行かない?」などというのは、私も異常だと思います。

 ただし一般の方には、男子校文化祭で「声かけた」とか「ナンパした」というのが何を指しているか、わかりにくいと思います。そこで順番に説明します。
ステップ@声をかける
男子生徒2〜3人組みが、来場した女子たちに、「焼きそば買わない?」など団体の一員としての宣伝でなく、「どこから来たの?」のように個人的に声をかけます。特に気に入った人にしか声をかけない「純粋」な男子もいますが、
1日に何十人にも声をかけまくる男子もいるようです。割合は少ないものの、女子がカッコいい男子に声をかける「逆ナン」が見られることもあります。
ステップA連絡先を聞く。
文化祭中ですから、長時間抜け出せることはあまりありません。今日だけ話して楽しかった、ではもったいないので、また会うために連絡先(たいていはメールアドレス)を聞く必要があります。男子が20回声をかけたとして、女子からメールアドレス等の連絡先を伝えてもらえるのは、そう多くはない(20回のうち5回くらいかな?)でしょう。
ステップBもう1回会う
メールアドレスを教えてもらっても、必ず会えるとは限りません。20人に声をかけて
5人から聞いたとしても、後日会えるのは2〜3回と思います。たとえば女子は、もっと気に入った男子と文化祭当日その10分後に会えれば、連絡先教えたとしても会う必要がないのです。もう1回会ったとしても、話が面白くなければ、それで終了です。3日目があるのは更に減ります(初めに20人に声かけても3回目以降会えるのは1〜2回ではないですか?)。
ステップC友達から昇格
よくあるパターンは、三人ずつくらいで友達になって、月に2〜3回のペースで2ヶ月くらい会っているうちに、「この人なら」という気持ちになって、いつのまにか交際が始まるというパターンです。三対三で始まっても、三組できることは、普通はありません。友達から特別な関係に昇格するためには、やはり何回か会わないと難しいのです。
 こうして見ていくと、男子が20回も声をかけたとして、彼女が楽勝でできるわけではないということがわかると思います。そして、文化祭当日に声をかけただけで、すぐ彼女・彼氏の関係になるわけではないのです。文化祭で声をかけるのが、ものすごく不健全だと考える方もいますが、他と比べると、まあ健全なグループ交際ではないでしょうか。

 個人的には、「もしナンパするなら、もっと美しくやれ」と言いたくなります。
 20年ほど前のある高校では、「道場破り」風の来場者が結構目立ちました
。研究発表を見て、来場者がその中身を批判するのです。「このデータだけで結論を言うのは明らかに短絡的ではないか」とか「死刑を廃止すべきという結論は、無関係な第三者だから言えることで、あなたが当事者になっても同様の正論を主張する自信があるのですか」などと批判するのです。そういう批判する来場者に対して反論できるように、準備して当日に臨んで、論議するのです。剣道の試合を対等に続ければ「おぬし、なかなかやるな」という気持ちになるように、論議をしているうちに結果的に仲良くなるというパターンです。これなら、文化祭自体の活性化にもつながります。運動部の招待試合も「自分を鍛えてカッコイイ姿を見せないとモテない」ので、良い意味での競争にもなります。しかし、ぶらぶらして声をかけるだけなら、文化祭の活性化につながりません。ますます雰囲気が退廃化してしまいます。心臓の強さと運のよさでナンパの成功は大きく左右されますので、自分を磨くことにも、ほとんどつながりません。
 ひとつ確認したいのは、「参加団体の一員として、来場した女子高生に勧誘するのは立派な行為」ということです。模擬店の一員として「たこ焼き買いませんか」と声をかけるのは、ナンパでも何でもありません。小学生や保護者には「たこ焼きいかがですかー」と軽く声をかけるだけなのに、女子高生には「ねえねえ、ぜひたこ焼き買ってよぉー。おいしいよーっ!!!」と強く訴える傾向がありますが、これくらいは、不健全なことではありません。
 個人的な感覚では、次の表のようになります

かわいい子だけ声をかける どんな女の子にも声をかける
一言目団体の宣伝 ○ 現実はこんなものか  私情を交えず立派な対応
一言目から個人的お誘い  真剣かもしれないからね × 節操ない奴は大嫌い


 現在東京周辺の男子校で、厳格に入場券がないと入れない高校は、私が知っている限り2校だけです。そのうちの1校は、他校と同様に女子高生ばかりが押し寄せたため、雰囲気を変えるために入場券制度をとったそうです。
 逆に言うと、大多数の男子校は、保護者や教師の側から見ると見苦しいナンパの場になっているにもかかわらず、強権発動をしないのです。なぜナンパの場を放置しているのでしょうか。個人的な見解を述べます。
(1)もともと男子校は、伝統校を中心に、生徒の行動を学校があまり干渉しない自由な高校が目立ちます。共学や女子校に比べて、生徒の自主性に任される部分がもともと大きいのです。規制しようとすると、生徒と無用?の対立を生んでしまいます。
(2)女子校の文化祭に、パンチパーマの男が改造バイクに乗って押し寄せれば、これは評判を落とす一大事です。しかし男子校が金髪でピアスの女子で埋まっても、激しいマイナス評価をする人はあまり多くないでしょう。世間の見る目が男子校には甘いのです。
(3)共学の学校では、女子は元気だけど男子は元気がないのが良くあるパターンです。男子は積極性がなく、知らない人とコミュニケーションを取る能力が相当低いのが現実です。積極性・コミュニケーション能力を付けさせたいと思えば、多少の逸脱は大目に見ることになってしまいます。
(4)「ナンパは、けしからん」と言うのは、たいてい声をかける個々の男子を知らない人です。「知らない奴ら」が、学校行事の場で純真な女子をナンパすると考えると、当然「けしからん」となります。しかし、個々の男子をよく知っていて「結構性格が良い奴ら」と感じていれば、彼女獲得を夢見て張り切る姿は、さほど問題だとは思えないのでしょう。

 ここで、素朴な疑問です。文化祭が恋人探しの場になっては、絶対にいけないのでしょうか。参加団体に入らずに、ぶらぶらして片っぱしから声をかける男子は、私は正直言って大嫌いです。ただ、全面的に否定されるべきとは思いません。
 昔は祭りの日には、無礼講で普段許されないことも許されました。文化祭でも昭和50年代ごろまでは、文化祭の中にフォークダンスがあり、普段は手を握れない男女が手を握って踊りました。
 こんな場面を目撃しました。埼玉の某男子校で、駄菓子を売る男子が、こんな勧誘を女子高生にしていました。
  男子:「ねえ、この綿菓子買ってよ、おいしいよ」
  女子:「えー・・手がベトベトするからダメっ!」 
  男子:「ウエットティッシュもあるよ、ねえ毎日同じ電車で通っている仲だから買ってよ」
  女子:「うそ〜」 
  男子:「本当だよ。大宮7:59分着の高崎線の後ろから2両目にいつも乗ってるでしょ」・・・・・・  
これで意気投合し、駄菓子売りを忘れて10分世間話をしていました。(私は10分ほど近くでチェックしていたが、もっと長時間しゃべっていたようだ)
 これが電車の中や街角で、知らない人に声をかけたら、この女子高生は怪しく思ってしまうでしょう。こんな場が、年に1回あってはいけないのでしょうか。

 男子校の文化祭は、女子校に通う者にとって、彼氏探しの練習に適した場という点も、特筆すべきかもしれません。一応学校の監督下なので、渋谷の街で見かけるような悪質なナンパは見られません。免疫がない生徒でも、比較的安心して異性と話せる機会なのです。
 相手の男子が高校卒業年齢になっていないというのも重要で、堂々と酒・タバコに手は出せないし車も運転できません。女子高校生がバイト先の20歳過ぎの男と付き合いはじめ、深夜までドライブにつきあって生活リズムが狂い、やがて中退したという類の話もありますし、20歳過ぎなら一緒に酒・タバコに触れる機会もありえるでしょう。男女交際全面禁止と考える人は別として 文化祭はこう見えても比較的健全な場なのです。
 男子校の男子にとっても、練習に適した場です。というのは、私の感覚では、男子校では彼女探しに積極的な生徒が約三割いる一方で、女子と縁がなく「あきらめ」というより「女子を得体の知れない怖い存在」と感じている生徒が2割程度いるような気がします。この2割の男子は、大学に入って女子学生がどんな存在かわからず、コミュニケーションをうまくとれなくなってしまいます。昔に比べ両者の差が激しくなっています。女子に縁がない男子にとって、生活の場である高校に、女子高生が大勢来る文化祭は、そういう意味でも貴重な存在だと思います。