文化祭の枠を変える 文化祭企画案内 

現在、文化祭が「長期低迷」「マンネリ化」している高校が、多いのではないだろうか。
活性化の対策を取りたいが、どうしたら良いのかわからないという実行委員・先生もいるだろう。
そこで、文化祭の枠そのものを変えて、文化祭を大きく変える改革の例を紹介する。
は担当の先生の裁量でもなんとかできる改革、★★は比較的大変な改革、★★★は反対も必至だが文化祭を大きく活性化できる改革である。それぞれの高校の状況に適した方策があれば、幸いである。



【1】野菜市を開催
 文化祭のイベントとして、野菜市を開催するのは、どうだろうか。
 農家が多い地区なら、地元農家に協力をして野菜を確保して、即売会が開ける。都市部でも、つながりがある地域の農協にお願いして、トラックに野菜を満載して送ってもらうことは十分可能だ。
 野菜市の開催で良いことは、高校の近所に住んでいる地域住民が、高校に足を運ぶきっかけになることだ。
 高校の近くの住民は、生徒たちに好感を持つことは案外少ない。自転車の2人乗りをしたり、帰宅時に道に広がって歩くから通りにくいなど、近くに住んでいるとマイナス面が目立ち、頑張っている姿を知る機会が少ないのである。
 野菜市を開くと、足を運んでもらえるのは、主に主婦層だ。実は母親のような主婦層は、野菜を買いに来るだけでなく、真面目な展示をしっかり見てくれる傾向が強い。文化祭が「祭り」に偏って「文化」の要素が衰退していっている状況の中で、これはありがたい来場者になる。
 また、一部の高校では、トラブルを起こしかねない若い来場者も来場してしまう。そういった人たちは、主婦層が大勢来る文化祭では、居心地があまり良くない。野菜市で「健全な(?)」来場者を増やすことで、間接的に客層を変えることにもつながると思う。
 ↓次の写真は、文化祭で野菜の即売をする様子。近所の家庭にチラシをポスティングしたところ、主婦層が文化祭にやってきていた。
農業とは無関係の普通科の高校も、このように開催することができる。





【2】体育館で展示を行う
 真面目で地味な文化系クラブの展示は、昔も今も、来場者が低迷する傾向にある。その対策として、教室ではなく体育館で展示を行ってはどうだろうか。
 1990年ごろは1学年400人500人と在籍していた高校でも、1学年200人になっている。参加団体数も減り、体育館や講堂のような広い場所に余裕がある高校が多い。
 それなら、演劇や吹奏楽の演奏は講堂で行い、体育館に展示を集めてはどうだろうか。
 広い体育館なら、8つくらいの部・クラスの展示ができる。最大のメリットは、一か所に集めれば、8つ全部の発表を全部見やすくなることだ。多くの高校では、生物部なら、生物の実験室を使用するので、他の発表とは離れて目立たない場所を使う。固定ファンは来るが、多くの人は足を運ばない。
 他の団体がどんな工夫をしたかを見る機会が圧倒的に増え、発表方法の工夫ができる。
 そして1か所ステージを設けて、交代でPRするのも良い。たとえば1団体15分ずつ映像も使って成果を説明するのである。
 仕切りのついたての確保が大変だが、真面目な発表を劇的に変える方法だ。
 この写真↓は、展示でないが、体育館に模擬店を集めた様子。このように、すぐ隣の展示の様子が見えれば、10歩あるいて隣を見ようと思うのではないか。





★★【3】午前は全員でステージ
 文化祭は、体育祭と違って、分散的と言われる。だが、一部の時間を全校生徒一か所に集める高校がある。
 午前中の2時間は、吹奏楽部や演劇部の発表を全員で観賞する、そして11時ごろから校舎で各団体に分かれて文化祭を行う形式がある。文化祭の華ともいえる部活のステージ発表だけは、全校生徒で見て、そのあとは各参加団体に散らばるのである。関東地方ではほとんど見かけないが、主に九州地方では、珍しくない文化祭の形式だ。
 特に適しているのが、全校生徒が400人以下の小規模校だ。参加団体が少ないと、文化祭が特に盛り上がっている高校をのぞけば、午前9時から午後3時までばらばらの参加だと、生徒がだらけてしまう傾向にある。
 その対策として、午前中2時間は、全校生徒が吹奏楽などの観賞をして、11時以降を各団体に分かれる方法がお勧めだ。
 全校生徒に強制的に見せるわけだから、対象となる吹奏楽部や演劇部は、中途半端なものを披露するわけにはいかなくなる。



★★【4】学年で出し物を決める
 学年で出し物のジャンルを決めてしまう手法がある。
 たとえば、毎年高校1年は「ダンス&ステージ発表」、高校2年は「娯楽と飲食」、高校3年は「演劇」と、参加のジャンルを職員側または生徒会が決めてしまうのである。都立伝統校は、結果的に定着している高校も多いし、北海道・茨城などでは学校としてジャンルを指定している高校もある。
 やや乱暴のようだが、これには多くのメリットがある。
(1)話し合いがしやすい
参加するジャンルが決まっているので、何をするかという話し合いに必要な時間とエネルギーを、準備に使える。
クラス替えがあったばかりの4月から、ジャンルが演劇すると決まっていれば、発声や脚本選びなどの準備が少しずつ進められる。指導に不慣れな先生も、暇を見つけて少しずつ勉強できる。
(2)クラスの競い合い
同じ学年では、同じジャンルの参加となる。隣のクラスがライバルになるわけだから、対抗意識が強くなる。特に、自分たちだけ遅れていたら大変だという危機意識が強まる。
(3)技術的な指導がしやすい
展示の指導なら大抵の先生は可能だが、ダンスや演劇の指導ができる先生は少ない。同じ学年が同じジャンルなら、学年の先生方で助け合って指導できる。 演劇の照明などで、技術的に分からない点があれば、1学年上の先輩に聞けば、大抵は解決できるのも、出し物の質を上げるのに役立つ。
(4)様々な体験ができる。
同じ種類の展示を3年間するのも悪くはない。しかし、様々なジャンルのものを体験して高校生活を終えると、経験値が大きく違ってくる。たとえば、ダンスなら非協力的な人が出てくるが、何度も呼びかけて一緒に踊れた経験をする。演劇なら、セリフを間違えないように演技した緊張感や達成感など、ジャンルによって違った経験をする。社会に出た時のことを考えると、やはり若い高校時代には、様々な経験をするのが、やがて貴重な財産になると思う。



★★★【5】近隣の他校と協力
 生徒数も来場者も少なくなり、文化祭の盛り上がりに欠ける高校が複数あれば、連携して盛り上げることもできる。
 ある県では、文化祭の日程が重なることが多く、隣の高校に抜け出して見に行くのが黙認されていることがある。同じ地域の隣の高校には、興味があるのは自然なことだ。
 そこで、近くの高校と、同じ日程で開催し、抜け出し自由とする。ただし家に帰っては趣旨から外れるので午前11時と午後1時あたりに点呼の時間を設け、自分の高校でも隣の高校でもOKとする。どんな出し物があるか知るためのパンフレットも、全員に2校分を配る。
 校内公開と合わせて、見る団体が2倍になる。スタッフとして参加する側も、見に行く時間を確保するため交代で対処するから、全員参加に近くなる。
 修学旅行に行く地域が「オーストラリア」の高校なら、隣の高校の教室でオーストラリアの修学旅行の展示を行うと、より注目を浴びて広めることができる。このように交流もできる。
 ここまで大規模なものができないのなら、9月第2週に開催された近隣の高校で、立派な出し物を第3週の高校に「招待する」ようなことがあっても良い。他校の人気企画は、招待した高校でも人気だろうし、結果的に招待された高校からの来場者も多くなりそうだ。



★★★【6】地域の祭りと同時開催
 地域の祭りと日程を重ねて、協力して開催することも考えてはどうだろうか。
 地域の秋祭りが9月中旬なら、その秋祭りに文化祭の日程をぶつける。地域の祭りに来た人に、高校の発表を見てもらう機会を得る。今までと違った客が大勢来ると見込まれるわけだから、準備する生徒も張り合いが出る。
 逆に考えれば、やや閑散とした文化祭に、地域の人がテント5つぶんの模擬店を出してもらって、学校の文化祭活性化の手伝いをしてもらえるわけだ。
 地域の祭りをする側から見れば、広い校庭や、水道・トイレなどの施設を借用できて、コンセントからの電気もとれるメリットもあり、助かるのではないだろうか。
 次の写真は、現在は統廃合してしまったが、安房農業高校の文化祭。人口8000人の町にある高校に、15000人来場していた。外部の業者の模擬店を数えたら約50に達していた。「地域の祭りと文化祭の日程を重ねて少しずつ提携する」のと、「文化祭がどんどん大きくなった」のとは違うが、高校の認知度が上がったのは事実だ。



文化祭の改革は、地道な積み重ねが大切なのは、言うまでもない。しかし、文化祭の枠を変えて、一気に変えていく方法も検討してはいかがだろうか。