「サボり対策 文化祭企画案内

 文化祭のクラス参加をする際、実行委員などの役員を悩ますのが「サボり対策」です。
 『文化祭の準備は面白そうだから役員になりたい。でも準備をサボったりして協力的でない人がいて、運営に苦労しそう。だから、役員になるのはちょっと・・・』と、ためらう人もいます。役員の仕事で一番しんどいのが、ヤル気を出さない人への対応と言ってもよいくらいです。そこで、サボり対策と役員の役割について、まとめてみました。

その1・一般生徒がサボるのは自然なこと
 まず前提となるのが「一般生徒がサボるのは最初は自然なこと」、「役員がサボり対策をするのが当たり前」という点です。
 そもそも、実行委員などの役員になった人は、「面白そう」と思って役員になったハズです。少なくとも「役員になってもいい」くらいは思っていたはずです。
 でも生徒の中には「文化祭なんてかったるい」と思っている人もいるはずです。ハードな運動部で活動している人、アルバイトをしている人、予備校に通っている人など、それなりの事情があるのです。(ですから「けしからん」と言うのは酷な話です。)
 要するに、役員は「ヤル気ある人」、一般生徒は「ヤル気ある人とない人が混ざっている」ことになります。すごくヤル気がある人が役員になるわけですから、最初から一般生徒に「ヤル気ない奴は、けしからん」というのは的外れなのです。

その2・先ず役員が動く
 最初の段階では、実行委員などの役員の方がヤル気があって当然なのですから、役員と一般生徒が初めからきれいに活動スタート・・・といけば良いのですが、現実的には難しそうです。まず役員が率先して活動を始める必要があります。
【1】資料集めをする
 お化け屋敷でも模擬店でも、どんなものにするか考える参考にする資料を集めなくてはなりません。「文化祭企画読本」シリーズ(高文研)、「文化祭でっかい物づくりハンドブック」(学事出版)などの書籍を参考にするのもよいでしょう。
 手軽に情報を情報を集めたければ、ヤフー検索で「文化祭 迷路」「文化祭 もぐらたたき」とでも打ち込んで画像検索をすれば、迷路やもぐらたたきの写真が大量に出てきます。
 考えるための資料があるから、一般生徒が案を考えやすくなり、意欲が出るのです。
【2】役員が動いて方針を決める
 4000個の空き缶で大きなものを作る場合だと、役員がまず空き缶を200個くらい集めるところから始めます。
 集めてみると、最初には分からなかったことに気付きます。個人商店には積極的に空き缶集め協力してくれる店があるとか、スチール缶は大きな力を加えても変形しないとか、色々分かるのです。試行錯誤を踏まえて自信を持って方針を決めたら、あとは大勢で作業に取り掛かるのです。
【3】後に続いてもらう雰囲気を作る
 役員が先に動いて準備を進めれば、他の一般生徒にも仕事を頼みやすくなります。「役員が頑張ってるんだから、俺たちも準備しなきゃな」という雰囲気になります。
 空き缶集めをする場合、外に一般生徒に行ってもらうのが気温35℃の暑い日で、役員は必要な会議を冷房が利いている教室ですることもあるでしょう。どう考えてもでも暑い中を歩き回る一般生徒のほうがきついでしょう。でも役員が今まで何倍も頑張っている姿を見ていれば、「役員は涼しい場所で楽してふざけんな」なんて不満は出ないでしょう。

その3・必要な情報を全員に伝える
 意外なことに、サボりが起こる理由が、情報量の差が原因の時があります。
 役員が持っている情報量は、一般生徒に比べ圧倒的に多くなります。クラスに提案する原案を作るのに2時間かけても、説明はせいぜい10分ですから、原案を作る途中の細かい論議は一般生徒には知られません。ですから、役員は全体像が分かっていますので、「今の作業がなぜ必要か」「作業が遅れたらどんなに困るか」を十分把握していることになります。
 たとえば、9月18日が文化祭で、EXILEのようなダンスをクラス全員でするとします。役員は細かい事情・全体像を知っているので、こう考えます。『台風が来たら外では練習できないし、全員が踊れる体育館が使える日は少ない。放送部が9月5日ごろに各団体の宣伝ビデオを撮影しに来て、昇降口付近で来場者に流すので、9月5日に上達してなかったら評判がガタ落ちになりかねない。』
そんなことを知らされていない一般生徒は『9月になって練習すれば、間に合うじゃん。何でわざわざ夏休みに来なきゃならないんだ!』と不満に思い、サボりにつながってしまいます。
 ですから、情報を全員に知らせる必要があります。知らせ方ですが、
(1)基本は毎日1回短時間で報告します。「昨日は、演劇の大道具に使うベニヤ板を購入に行きました。今日から制作にかかります。脚本の修正は明日までに完成予定です。今日の昼休みに発声練習をしますので、出られない人は、後で私に知らせてください。無断で抜けないようにしてください。」
(2)サボる人は、報告を聞き流してしまう人が目立ちます。そこで、必要な時に確認できるように、報告事項のメモを、教室の壁にどんどん張っていくと良いでしょう。
(3)月に1回くらい、まとまった時間を確保して、重要事項を確認しましょう。やや乱暴かもしれませんが、サボりの常習者に「来月の係の報告を、お前やれよ」と任せると、プレッシャーを与えてサボりをなくせるかもしれません。

その4・サボりにくい係分担も検討

 活動時間が長く強い運動部が多い高校では、クラスの文化祭の準備になかなか十分な時間をとれない生徒が多くいるはずです。これを「学校の名誉をかけて県大会優勝を狙っているのだから準備は免除」という考えもありますが、やはりできる範囲で協力をして欲しいところです。
 そこで、昼休みや自宅でも無理なくできる仕事を担当させる方法があります。たとえば、サッカー部・野球部・バスケ部・バレー部の4人に模擬店の広報係になってもらうのです。ポスターやチラシの原稿を書いて、イラストを描いて、印刷・配布する係です。打合せは授業の合い間の10分休みを活用し、放課後は原則として作業ナシとします。時には原稿を自宅に持ち帰ってチラシをパソコン入力してもらいます。運動部なら友人も多いハズなので、特に積極的に模擬店の宣伝をしてもらい、当日は普段から出している大きな声で呼び込みをしてもらうという具合です。
 なお、クラスの雰囲気を良くするという点では、既に仲の良さそうな運動部の生徒たちを1つの係にまとめるのは、マイナスに働くかもしれません。

その5・役員は仲間に感謝
 30年前は、サボった生徒に「何でサボるんだ! 」「みんなで決めたことだから協力しろよ」と強制して準備に参加させたものです。でも、今は難しいでしょう。「みんなが協力して当たり前」でなく、「協力してくれてありがとう」という発想に近づかざるをえない高校が増えてきたのが現実です。
 具体的に言うと、こんな発想・手法です。
(1)一般生徒に10求めるのは、役員が20やった後にしろ
一般生徒はヤル気がない生徒も混ざっているのだから、役員がまず働くべし。役員が2倍努力してから一般生徒に頼めば、たいていは理解してくれて協力してもらえると思います。
(2)サボりに文句言うのは、「中間層」を味方にできる時だけ
意欲に燃える人が2割、ヤル気がない人も2割、残りの6割が中間層という集団が多いと思います。役員がいい加減なのに、ヤル気のない人に「コラ!サボるな」と文句を言うと、6割の中間層からも反発を受けてしまいます。強くサボりに文句を言うのは、6割の中間層を味方にできる時だけに限定すると良いでしょう。文化祭が迫ってみんな一生懸命なのに、1人か2人だけサボり続けているなら、6割の中間層もイライラしているハズなので、強く出るのもアリ。
(3)先ずヤル気のある人だけで始める。その姿を見て加わってくれればラッキー!

やりたがらない生徒に無理して準備させるわけにいきません。そこで、やりたい人だけ参加して、やりたくない人は係につけない方法があります。「クラス参加」でなく、「クラスの有志参加」になるのです。でも、文化祭が近づき、準備が進み、ムードが盛り上がりつつある時期になると、今まで無関心だった人も、出し物に加わりたくなるものです。その時には、歓迎して迎え入れます。これで結果的に全員参加になるのです。



先生方へ
もし熱心なリーダーの生徒がいなければ、先生がリーダーの代わりになるのはどうでしょうか。