企画を磨く   

〜〜普通の企画を凄い企画に変える10の発想〜〜
   「文化祭企画案内」

 文化祭の出し物選びで、「今まで誰も思いつかなかった凄い出し物」を考えるのは、非常に難しいことです。ただし、普通の出し物を凄い出し物に改良するのなら、十分可能で現実的な話です。
 凄い出し物に改良する方法は、出し物が模擬店か展示かといった参加部門によって変わってきますが、実は、凄い出し物を考え出すのには、発想に共通点が見られます。この「凄い企画に変える発想」のうち、代表的な10個を、企画の例を出しながら解説します。平凡な企画から脱却し、斬新な凄い企画を目指してください。


  〜〜10個の発想〜〜
【1】逆にする 【6】演技する
【2】参加してもらう 【7】他団体と協力
【3】使用場所を変える 【8】大きくする
【4】一点に集中する 【9】ハイテク&ローテク
【5】材料を変える 【10】ひとりを前面に打ち出す

それでは、凄い出し物に変える10個の発想を、ひとつずつ解説します。

【1】逆にする・・・企画の重要な要素を正反対にする。
 ■白雪姫の演劇で男女を入れ替える■
白雪姫のストーリーで、感動させて泣かすのは困難でしょう。観客に満足してもらうためには、笑える楽しい劇にするのが近道と言えます。そのためには、「男女を逆にする」方法があります。王子様役を女子、お姫様役を男子にするのだ。格好良い女子の王子様が、パッとしない男子が演じるお姫様の顔を見て「何て美しい姫だ!!」と言って笑わせるのです。
 ■観客が答を知ってるクイズを知らない人に出す■
クイズの分野では「常識クイズ」が考えられます。その学校に通っている生徒なら全員知っているハズのクイズを出して、来年受験予定の中学生や、近所の住民にクイズとして出題します。「校長先生は親しみを込めて、ある動物のあだ名がついています。何でしょうか?」「本校の売店で唯一売られているスイーツは何ですか」などなど。
解答席に座っていない在校生の観客は、普通のクイズと違って解答を知っているため、出題者の立場で出場者を見ることになります。


【2】参加してもらう
・・・お客さんが受け身でなく積極的に参加する
 ■喫茶店でクッキーを作ってもらう■
教室を喫茶店にして、焼いたクッキーを提供する企画があります。動物などの楽しい絵や校章の形をしたクッキーを出すのも良いのですが、いっそのことお客にクッキーを作ってもらうのは、どうでしょうか。お客に手を消毒してもらって、楽しい形のクッキーを作ってもらいます。その後、焼きあがるまでの20分くらい、紅茶を飲みながら待ってもらうのです。自分で作る体験をして、その後に食べるのは、おいしく感じることでしょう。
 ■千羽鶴を作ってもらい被災地に■
東日本大震災の被害の発表をすることになりました。募金も良いのですが、被災地にメッセージを送りたいものです。たとえば、来場者に、福島・宮城・岩手向けに、折り紙で鶴を3つ折ってもらいます。そして作った作品に、「応援します、ファイト!!」とか「この前、回転寿司で気仙沼の魚が回っていたので、選んで食べましたよ」などと激励のメッセージを書いてもらい、束ねて送るのです。


【3】使用場所を変える
・・・使う場所が変わると企画内容も変わる
 ■合唱を外で行う■
合唱部の公演は、音楽室か体育館が定番となっています。外からの音が遮断できる長所はありますが、合唱部目当ての固定客しか来にくくなってしまいます。いっそのこと、校門入ってすぐの目立つ場所も、使ってはどうでしょうか。
場所を変えると中身も変えざるをえません。合唱にあまり興味がない客を引き付けるため、「全国コンクール課題曲」ではなく、多くの人が知っている楽しい曲に絞り、軽く踊りながら歌うのです。すると「ここの合唱部、結構上手だな」「面白かったな」と感じてもらって、音楽室の本格的な公演の方にも足を運んでくれる人が増えるでしょう。
 ■駅前の目立つ場所で寸劇■
1つ5分〜10分の短めで笑わせる寸劇をする場合、基本的には屋外の目立つところになります。でも、いっそのこと、更に目立つ駅前で演じてはどうでしょうか。文化祭開催中という宣伝も兼ねて、駅前に遠征すれば、更に多くの人の注目を浴びます。文化祭全体の来場者増加にもつながります。(市役所や警察などへの届け出・許可が必要な場合もあります)


【4】一点集中・・・多くを手掛けるのでなく、1つに絞って充実させる
 ■昔の生活は時代を絞る■
縄文時代、平安時代、江戸時代など各時代の食生活、服装、住まいを教室に再現しようという企画を立てました。でも、江戸時代の服装は時代劇で知られて新鮮味ないし、平安時代の住まいは再現が難しいのです。そこで、全部にエネルギーを注ぐのではなく、「明治の初め」に絞ると、発表場所も確保でき、手間暇もかけられます。全部でなく一部分に集中して中身を充実させるのです。
 ■教室全体の装飾■
尾瀬の自然の発表をすることになりました。あの雄大な大自然は、写真でも伝わりにくいですし、ましてや言葉の説明ではほとんど伝わりません。少しでもイメージを共有してもらうために、教室の中を全部、紙で作った水芭蕉を敷き詰めます。文章や写真による説明は廊下に出します。教室の中が「通路」なので、展示を見る気がない小学生も喜んで通り、結果的により多くの人に伝わります。


【5】材料を変える・・・予想外の材料でモノを作る
 ■お菓子で城を作る■
姫路城の模型を作ることになりました。でもとても美しい城だけに、精巧に作るのは難しく、努力しても貧弱というイメージになりそうです。そこで開き直って、お菓子で城を作るのは、どうでしょうか。たとえば「うまい棒」なら2万円あれば、かなり大量の本数が買えて巨大な城ができます。味によって包装の色も多彩で綺麗です。そして最後には解体して、来場者に分けるイベントを行い、盛り上がるのも期待できます。
 ■卵の殻で壁画■
壁画を作る場合、上手な絵にして完成度を上げるのも大切ですが、材料を変えるのも注目を浴びて効果的です。
ベニヤ板に直接塗料を塗るとか紙を張るのはよくある方法です。
斬新なのは、卵の殻を染めて貼る方法があります。文化祭前の昼食の際には、みんなで仲良く「ゆでたまご」を食べてカラを大量に確保します。
この他、手間がかかりますが、プリクラくらいの大きさの小さな写真を多数集めて1つの大きな絵を作ると、非常に注目を浴びます。

↑卵の殻を染めて貼った廊下の装飾

↑プリクラ大の写真を組み合わせた看板

↑拡大すると・・・


【6】演技する・・・面白くするために客に向けて演技をする
 ■展示の説明■
研究発表では模造紙の文字に加えて、係の生徒が説明すると効果的なのは当然です。説明を楽しくするために、寸劇をしながら説明すると更に印象に残ります。たとえば「幕末の歴史」の発表をするなら、お客さんの前で、西郷隆盛、桂小五郎、坂本龍馬の3人の役の生徒が、交互に説明するのです。西郷と桂が口論して刀を抜くと坂本が止めて握手させるような演技をします。こうすることで、分かりやすく引きつける発表になります。
 ■有名人を勝たせる■
「最強の男」を決めるイベントをするとします。10人が登場して、1回戦に腕相撲などをして5人に絞り、2回戦で3人に減らしていき優勝者が決まるイベントです。盛り上げるには、全校に知られた有名人が決勝進出することが重要です。そこで、1回戦の対戦相手を比較的弱い人に決めておきます。2回戦の「洗面器に顔をつけたまま何秒間息を止められるか」では、あらかじめ「50秒は息を止められる」と確認しておきます。そして「対戦相手は45秒で負けるから、有名人は50秒息をもたせろよ」となどと打合せをするのです。 「ヤラセだ!!」と文句言われないように、さりげなく競技でなくショーと案内しておくと良いでしょう。


【7】他団体と協力・・・別のクラスや文化部と提携して盛り上げる
 ■他の団体と競争する■
文化祭で飲食店は、競争とは無縁で緊張感が足りない点があります。そこで、飲食店をする3クラスで競争を行って、盛り上げる方法があります。緑茶と団子の「日本」、紅茶とナンの「インド」、ウーロン茶と小籠包の「中国」と、特色がハッキリさせた3つの店がお客の数を争います。そして利用したお客に「満足しましたか」と投票してもらい、「満足した人の割合」も競争します。これで、多くの人に来て欲しいので呼び込みも熱を帯びますし、満足した人の割合を高めるためにサービスも徹底するはずです。
 ■他団体の商品券を商品に■
ゲームやクイズの商品として、他団体と提携して商品券を渡すことも考えられます。模擬店のジュース無料券、お化け屋敷に並ばず入れる優先入場券、美術部の似顔絵無料券などなど。ジュース無料券と言っても原価は30円くらいで安いものです。地味な文化系クラブの券を渡すことで、地味なクラブを盛り上げることにもつながります。


【8】大きくする・・・何かを大きくしたり小さくしたり
 ■カルタ取りの札を大きく■
カルタや百人一首を文化祭でするなら、大きな札にすると面白いでしょう。芝生や体育館に大きな札を散らして置いておき、走って取りに行くのです。
応用として、47都道府県の名前が書かれた札が置いてあり、「一番人口が少ない県は?」と出題して鳥取県の札めがけて走るクイズ形式にもできます。札が大きいと、遠くで見ているだけで面白いと思います。
 ■球の大きさを変える■
娯楽としてボーリングをする場合、何か変えないと面白くありません。てっとり早いのが球の大きさを変えることです。幼稚園生なら直径60cmの大きなボールを使う、大人ならラグビーの楕円のボールを使うなどなど。球の大きさが違うと、見ている人も新鮮で楽しくなります。

【9】ハイテク&ローテク・・・最新技術を使う。逆に手作業に戻る
 ■遠くのゲストも映像参加■〜ハイテク〜
現在は、ハイテク技術を利用できます。昔はテレビ局しかできなかった全国各地との映像生中継が、インターネット回線などを使えば簡単にできるようになりました。戦争と平和をテーマにした討論会なら、広島や沖縄の人が、声だけでなく顔の表情も一緒に伝えることができます。遠くの人を呼ぶとなると交通費の問題が生じますが、適切な通信回線を使えば、安く効果的な企画になります。
 ■手作業で時計■〜ローテク〜
タタミ6畳くらいの大きな時計を作る出し物があります。サッカーボールくらいの植木鉢を80個ほど使って、デジタル時計を作るのです。「まもなく9時31分です。ピッピッピッポーン」と合図があったら、植木鉢20個で作った数字の0を、1に並べ変えます。(10個使って10個撤去)
デジタル表示は、植木鉢以外にも、「赤い体操服を着た人が並んで数字を作る」なども考えられます。時間の表示だけなら、100円均一の店でデジタル時計を買えば良い時代ですが、あえて協力して表示するのも面白いと思います。単調なら、毎時0分になったら、ハト着ぐるみを着た人が時計の周りを飛ぶようなイベントをすれば良いでしょう。


【10】ひとりを前面に打ち出す・・・全体は分かりにくくても1人なら知ってもらえる
 ■留学生の店■
ブラジルからの留学生がいるクラスで、コーヒーの店を出すことになったとします。ならば堂々とその留学生を店長にして前面に出しましょう。看板には似顔絵を描いて、入口で店長が案内・勧誘するのです。味も本格的かなと思えます。みんなから頼られて、留学生も悪い気はしないと思います。
 ■歴史は1人を通して■
平安時代の歴史の発表をする場合、教科書と同じような発表だと面白くない・・・・こんな時は1人だけに絞って発表すると良いと思います。「菅原道真の部屋」とでも題して、どのくらい優秀だったか、藤原氏との仲、大宰府に行ってから・・・それぞれ詳しく調べると、興味を持ってくれそうです。

以上で10個です。模擬店・迷路・展示など参加部門は違っても、考え方には共通するものが多いと思います。
ぜひ凄い企画に磨きあげてください。
なお、感想をお知らせくださると有難く思います。