文化祭企画案内 「出し物決定の注意点」

クラスで出し物を決めるにあたって、注意すべき点がいくつかあります
特に強調したい次の5つについてまとめてみました。

《その1》「どんな出し物があるか?」「参加目的は?」などの学習から始めよう

《その2》案を出すのは個人。出された案をより良い案に進化させるのはみんな。

《その3》役員は、原案を通すことに力を入れ過ぎるな。良い案が出たら受け入れよう。

《その4》出し物案の問題点があっても、解決策はあと。すぐ却下しない。

《その5》出し物決定にエネルギーを使いすぎるな。出し物の工夫を考える期間を確保しよう。


《その1》「どんな出し物があるか?」「参加目的は?」などの学習から始めよう
 出し物を決める前に、出し物についての学習をしましよう。クラスの役員が資料を作って、出し物を考えやすくするのです。
  「昨年の文化祭では、どんな出し物が行われて、評判はどうだったかを知る」
  「文化祭企画読本などの出し物の資料を用意して、他校の優れた取り組みを知る」
 本来は生徒会役員や生徒会顧問の先生が、全校向けに用意すべきなのですが、クラスでもできる範囲でやりましょう。
 特に高校1年生の場合は、文化祭の出し物についてほとんど知りません。「どんな出し物があるか」といった出し物の学習は欠かせません。そうでないと、中学の時に規制されてできなかった「お化け屋敷」「模擬店で食べ物売り!」を何も考えずにしたがります。(参加目的を確認したうえで模擬店を選択するなら、まあ問題ではありませんが)
 
 なぜ文化祭に参加するのかという参加目的の確認もしましょう。たとえば・・・
「普段過ごしているクラスでも、ほとんど話したことのない人もいる。文化祭に参加することで、より良いクラスにしよう」
「あまり話したことのない人とコミュニケーションをとり、組織的に仕事を進めることは、英語数学などの教科学習では身につかない。文化祭で学習しよう」
「本校は部活に熱中する人が多い。活動が盛んな部活に入っていない人も、高校時代に熱中したという思い出を残そう」
別に1つに絞るのでなく、2つ3つ並べるだけでも良いと思います。要は、単に楽しいか面倒かだけで物事を全部判断するのでなく、他の基準もあるよと伝えることが大切なのです。

《その2》案を出すのは個人。出された案をより良い案に進化させるのはみんな。
 「こんな出し物、面白そうだよ」と案を出すのは、基本的に個人です。昨年の文化祭で行われた出し物で、みんな良く知っている出し物なら別ですが、斬新な出し物の案を提案するのは1人の個人です。
 ところが、提案した個人に全面的に頼る傾向があり、場合によっては問題になります。
(1)言いだした人が「ぜひ責任者やりたい、俺に仕切らせろ!!」というタイプとは限りません。「提案者が即、責任者になる」という状況なら、ハードな運動部に入っている人などは「責任者をしたくない。だから何も提案しない」となってしまいます。みんなでより良い案にするよう協力する体制が必要です。

(2)出し物を最初に言いだした人の意見は、重視されて当然です。しかし、提案者に全部任せるのではなく、みんなで力を合わせてより良い案に進化させていきましょう。
「空き缶でスカイツリーを作ろう」と提案した人がいたとします。100分の1の634cmの高さにしたいという案です。でも、提案者が思いもよらなかった「進化させる様々な案」が、他の人から出てくることがあります。たとえば「先端の陰を利用して日時計にしよう」とか「空き缶でなくペットボトルにしてライトアップしては?」という改良案が出されるのです。何もないところからパッと案を浮かべるのは、フリートーキングを取り入れたとしても個人から生まれますが、大勢の頭で磨くことで優れた案に進化していくのです。

《その3》役員は、原案を通すことに力を入れ過ぎるな。良い案が出たら受け入れよう。
 クラスで出し物の原案を作る実行委員は、原案が最も良いと思って提案するはずです。 「感動的な演劇が良い! 」と自信を持って原案を出すと、反発する人たちが「お化け屋敷が良い」と代案を出して演劇に反対することがあります。 
 近頃はあまりいないようですが、昔いたのが「お化け屋敷は文化的と言えるのですか。文化的でないのでふさわしくありません」とお化け屋敷の案の中身も聞かずに正面から反対する役員でした。原案を通すことだけを考えれば、お化け屋敷の提案者を「黙らす」ことができればOKなのですが、演劇に決まったとしてもお化け屋敷支持派からの協力は望めません。クラスの雰囲気は悪くなりますし、この役員の友達は確実に減ります。これでは本末転倒です。
 
 お化け屋敷に反対したい時には、相手の案をじっくり聞いた上で、言い方を考えましょう。
役員「お化け屋敷には問題あると思います。神奈川県では文化祭のお化け屋敷で痴漢をしたとして、逮捕されて中等少年院に送られた(実話です)人がいるという話です。痴漢防止と文化的という大きな課題が残された課題ですね」
生徒A「痴漢なんてしませんよ。だったらお化けは全員女子でもいいんじゃない?」
生徒B「ブラックライトを当ててお化けの博物館にするのはどう?。教室を細かく仕切らなければ痴漢の心配ないし。」
生徒C「モナリザの絵の顔が、イキナリ血だらけのお化け役に代わるの面白そう」
→→正面から反対するのでなく、工夫を求めるのです。思いつきなら粘らずに消滅します。このように熱意があれば工夫を考えるので、その時は正面から検討しましょう。

《その4》出し物案の問題点があっても、解決策はあと。すぐ却下しない。
 ある人が文化祭の出し物を提案すると、すぐ別の人が問題点を指摘する場合があります。たとえば「クラス全員でダンスするのが面白そう」と提案したところ、「超メタボの××君は踊れないよ」と否定的な発言をする人がいます。
 提案に対してすぐ否定的な発言をするのは最悪です。なぜでしょうか。
(1)すぐ否定的な発言が2回3回と繰り返されると、次に自分が提案したら、また同じように文句を言われるのでは・・・と思ってしまい、次の提案が出にくくなってしまいます。
(2)解決策はその場でパッと考えるのは厳しいです。落ち着けば「一緒に踊るのは無理だけど、大きな体を活かして太鼓を叩くと迫力出るよ」といった解決策も考え出せるのです。他の人が問題点を解決する方法を知っているかもしれないのです。(《その3》のお化け屋敷の問題点の解決策なんて、実際には簡単に出てこないと思います)
(3)そもそも「100%完璧で全員が大賛成する出し物」なんてあるわけありません。少しでも難があったらダメという発想がおかしいのです。却下するのは更に優れた案が出されてからで良いのです。


《その5》出し物決定にエネルギーを使いすぎるな。出し物の工夫を考える期間を確保しよう。
 先ほどの《その4》でも書きましたが、出し物に悩んでいる人のかなりの割合の人は「全員が100%大賛成する凄い出し物がいい」と思ってしまっています。でも、そんな夢みたいな出し物、私には考えつきません。
 事実上ありえない出し物を求め続けると、どうなるでしょうか? あれもダメ、これもダメで、どんどん時間は過ぎる、ますます気持ちは焦る・・・イラ立って仲間に対して不信感が生じます。
 更に困ったことに、その後、妥協してそれなりの出し物に決まった時には準備期間が短くなり、文化祭に間に合わせるために突貫工事となってしまいます。
 このため、「何をするか」にエネルギーと時間を使い過ぎて、「どのようにするか」を考える余裕がなくなるのです。
 何をするかで「迷路」と決めるのに時間と労力をかけすぎると、どんな迷路にするか工夫を考える時間的余裕がなくなるのです。時間があれば、「教室でなくて校庭にクイを打って板で仕切るのは? 」「何? 強風が吹くと飛ばされる?」「じゃあ高さ1mなら飛ばされにくいよ。三輪車に乗って迷路を進めば1mで十分だし」といった工夫を考える余裕ができるのです。

より良い出し物を生み出すことを願っています。